「……逆だってありえると思わない? 俺が捨てられる可能性だって十分にある」

 「私がそんなことするはずないじゃない」

 「じゃあ、俺のことも信じてよ」


 こんなの卑怯だ。人の気持ちなんてどうなるかわからない。不安に思う気持ちはわかる。誰だって相手から望まれているかを不安に思いながら、好きな人を大切にする。

 でも、彼女は背中に爆弾を抱えている。

 いつそれが彼女の全てを栄養に変えてしまうかなんて、誰にも予測できない。
俺たちみたいな、特に何も憂うことなく日々を送っている人間からすれば、彼女の痛みは想像できない。


 だからこそ、俺がそばにいたい。


 「そばにいて、ひとりにさせないから」


 頬を両の手で挟み込む。大きな瞳に太陽が映り込んで、まるでふたつの宝石がはめこまれているようだった。

 涙でぐしゃぐしゃになった顔も、背中から覗く色とりどりの花も、震える指先も。


 「全部まるごと好きだから、悲しいことばっかり考えないでよ」