「西さん、なんて言って断ってた?」

 「今は病気で自由に動けないから、付き合っても恋人らしいこと何一つできないし、だと。男の方はそれでいいって食い下がってたけど、そんなの申し訳ないからごめんなさいって。結構バッサリ断るんだなぁって感心したよ」


 まぁあれだけ可愛いと告白されることにも慣れてるか、とひとりで納得する栗ちゃん。

 もし病気じゃなかったら、付き合ってたのかな。

 これまで、恋人がいたこと、あったのかな。


 「なぁ葵、お前本当に西さんと付き合ってないの?」

 「前も言ったろ。そういうのないから」

 「変なの」


 そんなこと言われたってどうしようもない。

 俺たちは友だち。それに、友だちになろうって約束を交わしたわけでもないから、友だちだって思ってるのは俺の方だけかもしれないし。


 「まぁ落ち着いてゆっくり考えろや。あたって砕けたなら、オレがお前のこともらってやるよ。オレ専属の家庭教師としてそばにおいておいてやる」

 「いらねーよ。栗ちゃん、態度悪いし」


 失礼な、オレはやればできる子なんだよ、という栗ちゃんは、相も変わらず男前だった。