「花が咲くってことはどこかに種とか球根とかがあるはずなんだけど、まだ見つかってなくて。細い根っことか茎とかが体の中で悪さをしちゃう前にとらないといけないんだけど、レントゲンにも映りにくくてさ。球根なら大きくてわかりやすいはずなのに、見つかってないんだ。もうどうしたらいいのって感じ」


 それでも、今のところ花の生育はそれほど進んでないから大丈夫だと彼女は言う。


 「でもなぁ、花に栄養やらなきゃいけないからか知らないけど、すごくお腹すくし喉がかわくんだよね。あー、乗っ取られてんなぁって感じ」


 そろそろ家賃もらってもいいよねぇと。

 これまでだってつらくて不安だったはずなのに、彼女はいつだって笑顔を絶やさない。

 仰向けになって寝ることができないから、横を向くかうつぶせで眠るしかない。

 服は花を圧迫しないように緩めるか、西さん用に加工された、背中の一部分だけが開いているものを着るしかない。


 どこまでも不便で、孤独だ。


 誰も理解しちゃくれないし、理解できるはずもない。


 「西さんは、消えちゃいたいとか、おもうの?」


 言ってから後悔する。もしこれで消えたいと言われても、俺はそれを慰められるような語彙を持ち合わせていない。


 「あぁぁぁっ、と、ごめん、その、口が滑った」


 「消えたいと思うことはないねぇ」


 うーん、と笑顔を浮かべて首をかしげながら彼女はつぶやく。


 「生きてたら小さいけどいいこととか楽しいことがあるじゃん? この前は葵くんに見つけてもらって寂しいのが消えたし、今日は私と葵くんの本の趣味がちょーーーっとだけ合わないってことがわかったしぃ?」


 やっぱり根に持ってるんじゃん。