恐ろしいことに、今は高校3年生の半ば。

 私立大学の推薦入試が終わって、ちらほら進学先が決まった人たちがでてきた。俺も春樹も国立志望だから、今絶賛追い上げ期。死に物狂いで勉強してる。

 この学校は、前の学校ほど勉強に力を入れているわけではないらしい。受験に対する熱意がそこまで感じられなくて、どっちかというと自分の生きたいように生きられる道を進む人たちが多い。

 土地や学校において変わる価値観。

 大きな変化として、家にいても窮屈じゃなくなった。

 新しい家の人はふたりとも優しくて、飼い犬の柴犬、ゴンザレスは俺のことを子分だと思っているらしく、毎日散歩の時間になると尻尾を振って俺に体当たりしてくる。なんとも可愛いヤツだ。

 俺が前の家でどんな境遇に置かれていたかとか、他の詳しいことをおとうさんとおかあさんが知っているのかは知らないけれど、今のことだけ考えてたらいいわよ、と言ってくれた。

 ちなみに、今の俺の名字は「喜多(きた)」だ。なんとも幸の多そうな名字で結構気に入っている。