夢と奇跡をもう一度



放課後。これから部活だ。私はいつも通りに部室へ向かう。中に入ると絵の具の匂いが私を迎える。この静かな雰囲気がまた私は好きなのだ。
部室には既に先輩二人が真剣に絵を描いている。私は特に話すことなく自分の椅子に座る。
するとドアがノックされ、彼方春が入って来た。
「あの、失礼します。僕今日からこの学校に転校してきた彼方春と言います。」
やば。ほんとに来た。愛想良さそうだから喋りかけて来そうだ。
大丈夫、と自分に言い聞かせる。こんなに愛想が悪い私からは直ぐに離れていくだろう。
直ぐに入部届けを書き終えたのか、彼方春はもう空いている椅子に座り、画用紙を広げている。私は自分の絵に向き直る。描いているのは公園の風景画だ。理由は何となく。
何となく、懐かしいイメージが公園にはあって、それを絵にしているのだ。
「その絵、すごく綺麗だ。」
「え?」
振り向くとそこには彼方春の姿が。いつの間に...
「僕にも教えて」
そう言って自分の椅子と、キャンパスを移動させて私の所へ来た。
「......お、教えられることなんて...ないよ」
緊張して声が上手く出ない。なぜなら、彼の容姿に目がいってしまうから。
女の子の様な顔だ。近くで見るとより美しく見える。
「そう?じゃあ明日からずっと僕と一緒に絵を描いてよ。それだけでいいから」
「ほ、本当にそれだけでいいの?初めて会った私と?一緒に?」
頑張って声を絞り出す。心臓の音が聞こえていないか心配だ。私は親指の爪を刺す様にぎゅっと手を握りしめる。これはいつもの癖。やっぱり喋り慣れていないなと、この時思う。
「うん!宜しくね」
そう、彼が少し悲しそうな表情で口にした。私はその表情を見逃さなかった。