「今日から一緒に生活してもらう転校生を紹介する。」
「彼方 春です。皆さんよろしくお願いします。」
パラパラと拍手が起こった。
「じゃあ彼方はあの空いている席に着いてくれ」
私からは、だいぶ離れた席だ。話しかけられることもないだろう。
授業が終わり、休み時間になると彼の周りには大勢の人が集まった。それもそうだろう。
濃い黒髪で顔立ちも美しい。身長も高く、痩せ型だ。集まった生徒にも、愛想よく話しかけている。
「何処の中学から来たの?」
「僕は北中だよ」
「マジ!?めっちゃ頭いいとこじゃねぇか」
確かに北中といえば、県内トップの私立中学だ。何故この高校に入学したのだろう。
「そういえばさ、春はなんの部活にすんの?」
さっきから、気さくに話しかけているのはクラスで人気者の佐々木啓介だ。
彼は誰にでも、明るく話す為皆から好かれている。私とは正反対だ。
「僕美術部に入ろうかなと思ってる。」
「意外だな。ちなみに俺サッカー部!良かったら見に来いよ。」
「ありがとう」
ん?今美術部に入るって言った?私と同じだ。私とは無関係だと思っていたのに。
私が入部している美術部は、部長、副部長と私の三人だけだ。あまり人気が無いことをいいことにそこに入った。先輩もおしとやかで優しい人なので居心地もいい。絵を描いている時は嫌な事を全て忘れられるから美術部に入って本当に良かったと思っていた。
どうせ、私なんかと話す機会なんてないだろう。
