「高3なのに……子供がいるんですか?」


「勘違いすんな。俺の子じゃねぇし」


「じゃあ、誰の?」


「きん……」


「まさか……誘拐した子?」




 バイクに寄りかかったまま
 固まった万里先輩。



 大丈夫ですか?と
 声をかけようとした時、
 いきなり大声で笑いだした。




「だからさ、
 オマエの妄想、ぶっ飛びすぎだって」



 朝の図書室と一緒。



「酷すぎだから」って言いながら、
 お腹を抱えて笑っている。




「万里先輩が、子供って言うからです」


「だからって、誘拐とか。
 オマエの脳内で、俺を犯罪者にするなよ」



 そんなに面白かったですか?

 万里先輩、まだ爆笑が止まらないし。




「近所の鍵っ子が、俺の家に集まってくんの。
 で、親が家に帰るまで、一緒にいてやってるだけ」


「万里先輩のお仕事ですか?」


「仕事じゃねぇよ。
 金なんかもらってねぇし、100%遊び」


 ただ働き?



「俺さ、ガキの頃からばあちゃんと二人暮らしでさ。
 ばあちゃんが世話好きで。
 親の帰りが遅い子を家に呼んで、
 ご飯食べさせたりしてたわけ」


「優しいおばあ様ですね」


「1年前にコロッと逝っちゃったけどな。
 子供たちも俺になついてるし。
 放課後に来るなとは言えねぇだろ?」