「うわっ!!」

後ろを全く見ずに後ずさったため、僕は転んでしまう。しかも転んだ先にあったのは小さな坂道で、僕は転がり落ちてしまう。

「イタタ……」

地面にぶつけて痛むところをさすりながら、僕は横をチラリと見る。横には大きな川が流れていた。もし川に落ちていたらと思うと、恥ずかしい話カナヅチのため、ゾッとしてしまう。

「顔に土とかついてないかな」

鏡を持っていないため、川に映る自分を見て確かめよう。そう思って川を覗き込んだ刹那、「えっ?」と声を出してしまう。

川に映っていたのは、太宰修也ではなかった。僕の意識はちゃんとあるのに、別人が映っている。

ボサボサの黒髪までは同じだ。でも、幼い子どもの姿をしているし、目はアメジストを思わせる紫だ。誰だってこんなにも容姿が変わってしまっていたら動揺するだろう。

「えっ?えっ?どういうこと?僕が僕じゃなくなってる……」

僕の意識があるこの男の子は何という名前なんだ?親は?どうして森の前で倒れていたんだ?疑問しか浮かばない。