「急に予定が入ったのかな?」

確か前にも、急にバイトに入ってくれって頼まれたと言いながら大慌てでほうきに飛び乗っていた。僕らに伝える暇もないほど急いでいたのかもしれない。夜ご飯には帰ってくるだろう。

それより、僕は今書いている小説を仕上げないといけない。今書いている作品以外にも、頼まれている仕事があるからだ。魔法を使いつつ、執筆を続ける。

集中が少し途切れた頃、バタッと音がして僕は音のした方を向く。僕の部屋に置かれた大きな本棚から一冊だけ本が落ちていた。白い表紙には金色の豪華な刺繍が施され、美しい一冊となっている。でもタイトルは書かれていない。

「これって……」

僕がその本を手にした刹那、何かに飲み込まれる感覚がして意識が遠のいた。