何がどうなっているのか状況がさっぱり掴めず、私はただ呆然と突っ立っていることしかできずにいた。

 けれど真っ青な桜小路さんの顔色に、ただ事じゃないというのが窺えて、慌てて駆け寄れば。

「だ、大丈夫ですかっ!?」
「……み、水をくれ」

 荒い呼吸の合間でそう訴えてきた桜小路さん。

 その声に弾かれたようにマッハの早さで疾走しキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを手に戻ってきた私。

 それを受け取った菱沼さんの手には既に錠剤が用意されていて、その連係プレイが功を奏し。

 現在、リビングのソファにふんぞり返っている桜小路さんは、もうすっかりいつもの調子を取り戻している。

 そして桜小路さんの隣には菱沼さんが居て、その向かいのソファに腰を下ろした私は、菱沼さんからさっきの説明を受けているところだ。

 なんでも、桜小路さんは幼少の頃は小児喘息を患っていたらしく。元々アレルギー体質だっとことが災いして、さっきのように時折アレルギー発作を起こしてしまうんだそうだ。

 そしてその項目も、大人になるに従い少しずつ増えていったらしい。

「化学物質……過敏症……ですか?」
「あぁ。おそらく創様の継母がつけていた香水に入っている化学物質でアレルギー発作を起こしたようだな」
「そうだったんですか。でも、帰って何時間も経ってるのに」
「あの方はいつも強烈だからな」
「あぁ、だから愛梨さんが換気換気って何度も言ってたんだぁ」
【そうよ】
「だったら説明してくれたら良かったじゃないですか」
【あら、だって、菜々子ちゃんは知ってると思ってたから】
「ーーん? 誰が何を言ってたって?」
「あっ、いえいえ、なんでもありません。はい」