けれども、その声がだんだんと寂しげなものへとなっていき、最後には穏やかな口調でしみじみとした声音を放ったご当主が寂しそうに眇めた目尻に涙を滲ませている。
それを目の当たりにしてしまった私まで目頭が熱くなってきてしまい、思わず涙ぐんでしまってて。
急にしんみりとしてしまったこの場の雰囲気を払拭するかのようにして、今度は創さんから安定の不機嫌ボイスが放たれた。
「なんだよ、急に。親父が変なこと言うから周りまでしんみりしてるだろ。こういうときこそ当主らしくしてくれよな。まったく、これだから年寄りは。やっぱもう道隆さんにあとのことを任せて隠居した方がいいんじゃないか?」
けれども、いつもと違って、言葉の端々に優しさが滲み出ているというか、言葉とは裏腹に。
親父にはいつまでも元気でいてもらわないと困るーーそういう想いが込められているように聞こえた。
実際には、創さん自身でないから本当のところはどう思っているかなんて確かめようがないのだけれど、私には確かにそう聞こえたのだ。
そのことを裏付けるようにして。
「ようやく身を落ち着ける気になったと思ったら、今度は親を年寄り扱いするとは、本当に我が息子ながらに呆れ果ててものも言えないなぁ。愚息を持つと苦労するよ。こんな息子に次期当主なんてまだまだ譲れないから、長生きしないとなぁ」
冗談めかしてそういったご当主は私と創さんを優しい眼差しで見やってから、同じように涙ぐんでいる奥様の菖蒲さんととっても幸せそうに微笑みあっている。
そうして周囲を見渡せば、道隆さんも貴子さんも同様にご当主らに貰い泣きしつつも微笑みあっていて、創太さんに至っては頭をポリポリと掻きつつもなんだか嬉しそう。
愛梨さんの言うように、本当に大丈夫なようだ。
長年、すれ違ってわだかまりがあったとは言え、元々は血を分けた親子なんだし。
それに、これまでだって、お互い見て見ぬふりをしていた根底には、『嫌われたくない』という想いがあったからこそ、すれ違ってしまったに違いない。
お互いが歩み寄って、根っこの大事な部分で繋がりあっている今となっては、何があっても揺るぎようがないのかもしれない。
