胸中で頭を抱えて絶賛オロオロ状態だった私に見かねたのか、創さんが実に忌々しげに「そういう親父こそ」そう言ってきたかと思っている間にも。
ご当主に向けて苦言を呈している創さんの姿を横目に捉えた私が、なんとかこの場を凌げるかと様子を窺っていると。
「いくら可愛げのない息子しかいないからって。ことあるごとにこうやって菜々子に構うのはやめて欲しいもんだな。そうでないと、菜々子がどう反応したらいいか困ってるじゃないかよ。ったく、年甲斐もなくみっともないのはどっちだよ」
親子とはいえ、ご当主に対して喧嘩腰にしか聞こえない物言いの創さんに、今度は違った意味でハラハラしてきて、心がざわついて落ち着かない。
心なしか、さっきまで和やかムード一色だったはずの大広間の雰囲気が、どんよりと重苦しいモノになってしまったような気がしてくる。
長年のわだかまりがようやく解けたというのに、これじゃ元の木阿弥になりかねない。
ーーどうにかしなければ。
そうは思いつつも、焦った頭でいくら考えてみたって、一体どうすればいいのやら、まったくもって思い浮かばない。
私はますます焦るばかりだった。
そこへ、またまた明るい愛梨さんの暢気な明るい声音が意識に割り込んできて。
【ふふっ。菜々子ちゃん。そんなに心配しなくても大丈夫よ】
そうは言われても、創さんは相変わらずイケメンフェイスを忌々しげに歪ませているものだから安心などできるわけもなく。
(いやいや、愛梨さん。全然、大丈夫そうに見えないんですけど)
愛梨さんに向けて頭の中でそう念じてみたところ。
【あら、そんなことないわぁ。今までと違って、創も創一郎さんもとっても楽しそうなんですもの。ほら、ね?】
またまた愛梨さんから『何を根拠にそんな無責任なことを』と思っちゃうくらい脳天気な声が返ってきて、半信半疑の私が創さんとご当主の双方に視線をやったと同時に、今度はご当主よりあっけらかんとした明るい声音が放たれた。
「ハハッ。そんなこと言われても、こればっかりはしょうがないじゃないかぁ。どんなに可愛げのない息子であろうと、親にとったらいつまでたっても、目に入れても痛くも痒くもないくらいに可愛い子供には違いないんだからなぁ。まぁ、創も、そのうち親になったら分かるようになるさ。それまでは、いつでもこうして顔を見せに帰ってきてほしい。そのためにも息子にとって大事なお嫁さんとも仲良くしないといけないんだし、これくらいは大目に見てくれないと困るなぁ。それでなくともしばらくは会えないんだし……」
