そのため、今桜小路家の大広間でいることをすっかり失念してしまっていたらしい私は、慣れもあって、声には出さなかったものの、顔には感情がダダ漏れになってしまっていたらしく。
私の手をしっかりと大きな掌に包み込んでくれている隣の創さんに手をそうっと引き寄せられ、耳元で。
「……どうした? 菜々子。もしかして、慣れない飛行機のせいで疲れてるんじゃないのか? なら、部屋に休みに行った方がいいんじゃないのか?」
とびきり優しい声音で囁きかけてくれる創さん。
その声で、慌てた私が何かを返そうと声を放つよりも先に。
「それはいけないなぁ。どうせうちの可愛げのない息子が可愛い菜々子ちゃんに毎日のように無理ばかりさせてるからだろうし。大事をとって部屋でゆっくり休んでくるといいよ。創、くれぐれも菜々子ちゃんのことをゆっくり休ませてあげるんだぞ。それも夫としての大事な勤めだからな」
大広間に響き渡ったご当主の大きな声により、私は真っ赤にさせられる羽目になってしまっていて。
それをいち早く察してくれたらしい創さんの不機嫌な声がご当主へと返されたのだけれど。
「……イチイチ言われなくたって、ちゃんと分かってるから、黙っててくれよ。親父のせいで菜々子が真っ赤になってるだろう」
創さんの言葉で皆の視線が集中することとなってしまったお陰で、ここにいらっしゃる桜小路家の面々から……。
「おやおや、微笑ましいねぇ」
「あら、本当ねぇ」
「あらまぁ、本当、真っ赤だわ。可愛らしい」
「やっぱりそうだよねぇ。初見でも思ったけど、菜々子姉さんってほんとに初心だよねぇ」
このように、様々なお言葉を戴くことになってしまい。
所在なく肩を竦ませて縮こまることしかできないでいる私の、顔どころか、全身がますます真っ赤になっていく。
そこへ、いつもの如く、空気の読めない愛梨さんから実に暢気な声音が届くのだった。
【菜々子ちゃんのお陰で皆、息までピッタリだわぁ】
