だだっ広い大広間で、和やかな雰囲気に包まれて、感慨に耽ってしまっていた私の意識にすーっと愛梨さんの言葉が割り込んでくる。
【本当に良かったわぁ。ついこの前、帰ってきたときには一体どうなっちゃうのかと心配だったけれど。菜々子ちゃんのお陰で、和気藹々って感じね。これならもう安心して成仏できるわぁ】
そこで、すっかり忘れてしまってた愛梨さんの存在を思い出したのだった。
存在といっても、幽霊なのだけれど。
それでも、確かにここに今、愛梨さんは存在している訳で、けれども私にしか分からないようなので、ここで驚きの声を出すわけにはいかない。
なんとか声を出さずに済んだ私は、愛梨さんの言葉に、またまたこの前のことが蘇ってくる。
ついこの前、創さんのことを追いかけて空港に向かう車の中で、私にさよならを告げると同時に幻のように姿を現してすぐに呆気なく消え去ってしまった愛梨さんのことだ。
今度こそ、本当に成仏してしまうのかと焦ってしまった私は、声を出しかけるのをすんでのところで抑えて。
(愛梨さん、まさか、成仏しちゃうんじゃないですよね? まだ、孫の顔も見てないのに、そんなのダメですからね。まだここにいてくれないと寂しいんですからッ!)
心の中でそう念じるのだった。
すると、愛梨さんから、間髪入れずに意識にすーっと言葉が入ってきて。
【あら、菜々子ちゃんたら、嬉しいこと言ってくれるのねぇ。ふふっ、大丈夫よ、心配しないで。もうなんか、口癖になっちゃってるだけだから】
イチイチ真に受けてしまう、こっちの気も知らないで、あっけらかんとした言葉が返ってきたものだから、私は少々ムスッとしてしまうのだった。
(……だったらいいですけど。できたらその口癖はやめてください。そうでないと、聞くたびに、この前のことが浮かんできて、泣きそうになっちゃいますから)
