残念ながら、今ここには愛梨さんが居ないので、再度確認をとることは叶わない。
けれど、何度聞きかえしてみたところで、きっと愛梨さんからの答えは変わることはないのだろう。
私がうっかりしていただけで、ちょっと考えれば分かることだ。
愛梨さんが創さんに幽霊になった自分の存在を秘密にしておきたいっていうのには……
ーー悲しいお別れは一度でたくさん。もう二度と悲しい想いをさせたくない。
きっと、そういう想いがあるからなのだろう。
空港に向かう車の中で、もうすぐ成仏するだろうからと、私にお別れをしていたくらいだ。
幽霊となってしまった自分自身でさえも、一体いつまでこの世に存在できるかも分からないのだ。
そんな状態で、創さんに自分の存在を明かせる訳がないーー。
いくら幼い頃だとはいえ、大好きな母親とのお別れはとても辛くて悲しいことだったに違いない。
ずっと母親の面影をカメ吉に重ねて、手放せなかったくらいなのだから。
うっかり者である私がそのことにようやく思い至った頃合いで、とっても心配そうな創さんの声が思考に割り込んできた。
「……菜々子? さっきからというか、向こうを発つ前から、少し様子が違ってた気がするが……。やっぱり初めてのフライトでずいぶん疲れてるんじゃないのか?」
お陰で、一人考えに耽っていた私はハッとし。
ーーいっけない。今は目の前に居る創さんに集中しなければ。
慌てて、依然私のことを背後からスッポリと包み込んでくれている創さんの方へと振り返れば、とっても心配そうな創さんの視線と私のそれとがかち合った。
それに伴い、さっき創さんに言ってもらった言葉の数々が鮮明に蘇ってくる。
今になってその時に感じた嬉しさが時間差で効いてきて、あたたかなものがじわじわと込み上げてくる。
