「ねぇ!!!紫耀!!見た!!?新聞!!」
もうすぐ高二が終わろうとしていた3月のある朝。
いつものように高校へ行くために本土へ渡る船を待つ待合所に入ってくるなり
幼なじみの佐倉くるみは興奮気味に言ってきた。
都会ならきっと、桜も咲き始め暖かい季節だと言うのに、この東北にある港町の離島は、まだまだ雪が残る寒い季節真っ只中だ。
待合所はストーブでじんわり温かい。
そんな心地よい空気が眠気を誘ってくる。
俺はくるみとは全く逆のまだ完全に冴えきらない頭で返事をした。
「みてない。何?」
「見てないの!?あんな大ニュース!!!」
新聞みる習慣がある訳じゃないし、そんな大ニュースあったか?と思っていると、くるみはカバンから朝刊をだし、ある記事を指さしながらみせてきた。
「ほら!!ここ!!!」