「ひどいよ、とんちゃん」
 おれには絶対に見せない、年相応の、こどもっぽいふてくされ顔。
 ふん。
 それがむかつくのは、町田がおれには礼儀正しい後輩の顔しか見せない理由が、たぶんおれに()いている王女さんのせいだとは理解しているからだ。
 おれには見えない、感じない女。
 彼女と言葉は交わせないという町田が、見た目だけで王女だと(あが)めるんだから相当なババアなんだろうけどさ。
 女がひとりいるせいで、男同士のバカ話もできない関係なんて、つまらねぇにもほどがある!

「おい。おれは書いたぞ。おまえも書きやがれ」
「おれは王女さまに、失礼なことはできません」
 はぁぁああ?
「加藤さんが、それをおれだと言い張るより、おれ、無理ですもん。絵心ないんで」
「…………」
「わかっていただけました? 似てない似顔絵なんて意味ないし。申しわけないし」
 ごりっぱな忠誠心、ごりっぱな執事だな。
 でもおれは、あきらめねぇぞ。