王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。

「箱とかに入れればバスに乗ってもいいのかな」
 すっかり2匹になつかれて楽しそうな平泉さんが首を傾げても、おれもできるのは同じポーズだけ。
 人間のことすらわからないのに犬猫のことなんて聞かないでくれ。
 おれの代わりのように、町田がくすりと笑うとおれの背中の通学バッグに手をかけた。
 なに?
「どうせろくなもの入ってないんでしょ? トレードすればいいですよ。あの猫缶が入ったビニール袋と」
 はい? ふざけんな! 
 思うのに身体の反応は遅いおれの肩からバッグを抜き取って、町田が無造作に中身を取り出す。
「あーあー。参考書も入ってないじゃないですか。平泉さんを待つ間、なにしてたんです。また読書? 推理小説なんか読んでるひまがあったら年表を暗記するとか。受験生さんはやることいっぱいあるでしょ」
「わー。ごめんなさいっ」謝ったのは平泉さんだ。
「加藤くん3年生だって聞いてたのに。どうしよう」
「や。おれはいいんですけどね」
 よろしくないのは町田のでかい態度だけ。
 なにしろ目の前でテキパキと右から左へ、トレード完了。
「はい。どうぞ」
「は? ぁ、はい!」
 フミャア フミャア
 大量の猫缶といっしょに狭いところに押しこめられた猫たちがうれしそうなのは、なんでかね。
 飯の匂い? まさかなぁ。