あの雲が勢力をそのままに居座ったなら――。
 カチッと動き出した脳みそで、地球の自転スピードについて考える。

 2011年3.11東日本大震災で地球の形状軸は17センチ動き、1日の時間は1.8マイクロ秒短くなった。その前、2010年のチリ地震では形状軸は8センチ移動し、1日は1.26マイクロ秒短縮。さらに前の2004年スマトラ沖地震でも形状軸は7センチ移動し、1日の時間は6.8マイクロ秒短縮している。

 どんどん短くなる1日の時間。

「つまり今って、1日24時間てのは、テストの答えとして正確じゃないってことだよなぁ」
 そんなことならいくらでも考えられるのに、なぜに日本列島レベルの時間軸はさっぱり頭に入らないのか。
 苦手な暗記教科の底上げが目下の課題。
 サクラサクへの近道だけど。
「何百年も前に死んだ男たちの身上書を脳みそに刻みつけたところで、何の役にたつっていうんだ。テレビで時代劇でも見てるほうがよっぽど有益だわ」
 おれがぼろぼろこぼすパンくずをついばむのに忙しいすずめたちは返事をしてくれない。
 代わりにやっと聞こえた小さな笑い声と、頭を覆った短い人影。
 おれがしつこく話しかけていた相手、町田だ。