あたしは、幼稚園に入った。
 お弁当は、ちゃんとしたものを、準備してくれていた。
 世間体の為に。
 幼稚園に行く時、毎回、ベビーカーに乗った、弟もついてきた。
 あたしとしては、近所の親戚に預けて欲しかった。
 祖母と話しがしたかったから。
 「(このまま、誰とも話せないのかな。)
(弟、可愛いけど、嫌なことばかり…。)」
 幼稚園では、友達と、沢山話せて、色んなごっこ遊びをした。
 家に帰ると、義父と母は、まだ帰ってなくて、祖母は、弟の世話で忙しそうだった。
 あたしは、2階に行き、母の鏡台の前で、独り言を話してた。
 それだけ、あたしは、話しを聞いて欲しかったのだ。
 初めは、鏡に向かって、今日の1日を、報告しているだけだった。
 でも、相手は、鏡…。
 返答なんか返ってこない。
 それでも、、あたしは、話しかけ続けた。
 ある日、鏡から、声がしたような気がした。
 あたしに、話しかけてきたのは、同い年くらいの、女の子だった。
 女の子は、「わたし、りの。」と言った。
 りのは、あたしと、ままごとをして遊んでくれた。
 あたしは、新しい友達が出来て嬉しかった。
 「りの、明日も遊ぼうよ。」
「いいよ。」
 りのは、ふっと消えた。
 あたしは、りのを探した。
 でも、見つからなかった。
 「(どこに行ったんだろ…。)
(明日、聞いてみよっ!!)」
 あたしは、夕飯の時に、下に降りた。
 そして、ササっと食べて、2階に上がった。
 「(りのが、いるかもしいれない。)」
 そう思って、部屋に入ったけど、りのは、いなかった。
 あたしは、しょんぼりしながら、お風呂に入った。
 「(明日、また会えるかな…。)」
 そう思いながら、眠りについた。
 次の日ー。
 幼稚園から帰ると、すぐに、2階に行った。
 すると、りのがいた。
 「りの!
昨日、ささっと帰るから、びっくりしたよ。
どこに行ってたの?
お家?」
 りのは、濁(にご)しながらも、「まぁ、そんなとこ。」と言った。
 あたしは、不安になって、「居なくなと、寂しいよ…。」と言った。
 りのは、苦笑いをした。
 それから、優しい目をして、「大丈夫。ずっと、いるから。」と言った。
 あたしは、この時の意味が分からなかった。