昔の事だ。懐かしく思い出す。母は泣いていた。林彦は、死んだ。
 林彦は麓と仲が良く、良く遊んで花を食んでいたー。二人は十九歳で、仲が良かったと聴く。
 神の噂で聴くと、もう長らく神の座を失った男だった。もう、君臨して長く、一億年経つ。そんな二人の話だ。

 処したのは、ダイヤであった。泣いた。ダイヤの目が綺麗だから、愛しても良いかと聞いただけだった。
 垣間見えるのは天、空を駆ける鳥、思い馳せるのは、ダイヤの美し過ぎる瞳ー。
 ダイヤは、昔いた唯一神で、堕ちた姿の為苛々していたと聴く。
 やるせ無いねえ、そう言ってヒトを汚しては殺していたー。
 大因業があり、大賽に伏していたりもした。やるせ無いねえ、俺の目が綺麗、だとー?
 林彦は、一瞬で消されて、瞬く様に王様でしたもう林彦ですと言われたかと思うとー、隣に麓がいて、泣いていた。大泣きだった。
 麓は女みたいだなと林彦は言った。麓は泣いていて、こんなに哀しい事は無い、そう、言った。
 ダイヤは、一番偉大性の高い神だった過去があり、もう戻れない因業を多々積み遣った男だ。 
 髪が黒く、目が美しい色をしていたと聴く。いつもは破壊堂にいて、一人大賽の真似事をしていた男だ。
 年端は二十歳で、背は高い方であった。美しいのは、誰。そう言っては、人を虐め抜いていた偏屈な男であった。

 ある日、ダイヤは、林彦と麓を破壊堂に呼んだー。
愛し合っている?
 そう聴いたダイヤの美しい目は泣いている様に見えた。
愛し合ってはいません。
 そう林彦は言って、また言ってしまった。凄ーく、綺麗な目だねえあんた。凄く綺麗だよ。
 沢山人を想って来たんだろうねえ!麓は、馬鹿野郎がと小声で正した。違います、こいつは馬鹿なので気にしないで下さいね王!
 実はダイヤは天で一人しかいない王であった。とっくに落ち込み、人を汚す位しか出来ない立場に追い遣られていた。
 泣いてはいないよとかビラを配る事があって城は荒れていたりもした。
 泣いてはいないダイヤは、もう林彦を汚す事ばかり考えて賽の河原に遣ろうとしていた。実直には泣いてるよと置き書きを残そうかと思ったりもした。
 城には仲間がいて因業無為も多くいた為に二度と戻れなくなされてしまった。本寧大泣きをしていた。
 林彦を今日は殺しに来たと言った。赦せないね、そう言った。

 林彦には前生があった。
それはそれは美しい女でー、実は、みな林彦が欲しかったー。
 名をカミヨ、金髪碧眼の美女であった。神世創世の際に生を受けた美女で、永遠に愛される筈だった。
 だが、自分の美しさに気付かずに、他の女を賛美する事千、落ちて林彦になった過去がある。
 本人は知りはしなかった。泣いて、実はダイヤも林彦が欲しいと言っていた。麓はそれを知らないでいる男だった。いずれ共に生きて行って欲しいとみな言っていた。林彦より美しいミタマは無かった。

 破壊堂は魔の手を葬った。
ダイヤを改心させ、金髪に戻してやろうとしたのだ。
 その瞳の色は、黒髪には似合いませんとみな言った。麓は黒髪黒い目なので、実はダイヤと林彦をくっ付けようとしたのだ。知ったら哀しくて二人は泣く。
 ダイヤとは誰も一緒にいたくは無い。何だとっ!?聴いていましたかダイヤ。美しい女一人も口説けはしない男。
 来る?破壊堂。ぎゃはっ。笑わせるな下卑たる男ダイヤ。一切無為如実たるは仏の座も無き。
 林彦には兄弟がいて、一彦と、二彦であった。姉もいて燐であった。一番美しいのが林彦で、姉も穿つ程に美貌であった。
 一人だけ、ミタマ迄も本当に美しいのは林彦で、誰もが目を見張った。思う事があった。
 ダイヤは、彼を欲していた。でも、お互い落ちた姿で嫌だった。麓は、とある事を行ったらダイヤを元の王に戻せると思っていた。 自分が、渡し守になる事であったー。ダイヤを、神世迄連れ立ち、貴方は王です。もう、仕方無い人ですね。
 ふと通りがかりに肩を引っ張られた麓、何と、とんでも無い話を聞いた。林彦が、美女の前生で、みなに愛されていた?本人はそれを知っていない?
 渡し守を行いたいなら、お前は林彦を諦め、二人を神世に誘えー?い、嫌だー!落ちて行った麓は自らのミタマが司る麓にいた。麓は其処のミタマである。  
 泣きはしなかった。死んでも華見えだ。渡し守をやると決めた。自らの一生分の命と引き換えに、全ての花を昇華させ、ミタマを最大神に一日だけして貰って、何と麓は消え無くてはならなかった。
 良いよ。最期に林彦と口付けが出来るのなら。しかし、林彦は拒んでいて、何も聴いてはくれなかった。
 何で聴かない林彦。お前は美女なんだよ。少し泣いていた。そんな事位知っていた。はあ、知っていた?
 知っていたよ。女でブロンドなんだろ。男でなければ意味は無い。永遠に知らない振りをしただけだ。   
 ダイヤだってそうだ。落ちて破壊堂の方が遣りが良いからなんだよ。迷惑だ。お前なんか死ねば良い!女だったらどうだ。俺には何の意味も無くなるだろうに。地獄を味合わせたか。死ね、みな、俺は許さないからな。
 泣いて全ての昇華した花はしな垂れていった。泣いたのは全員だった。
 カミヨ、愛してた。林彦は後日死んでいた。自刃だった。  
 麓は死後の世界に行ってみたらいなかった。林彦は無理矢理カミヨに戻され、玉手箱に入れられて、愛する男五億人と共に入れられ、永遠にされて仕舞った。
 泣いていた麓は、後を追わなかった。麓のミタマだから、永遠にいてくれて構わないからだった。
 ダイヤも、何も変わらず破壊堂にいたり人を汚したりに戻った。泣いていた。こっそりカミヨの玉手箱に通っていた。
 林彦は永遠に美しかった過去とされ、今や世界を驚愕とさせる美貌の女だとされて仕舞った。
 あんなに女になりたく無いと言っても叶わないのなら、人一人にだってほとほと価値たるや如何、林彦は今も、麓とだべるって良いねーと溢し、幸せそうにしていた夢を見た。