夏空、蝶々結び。




日が暮れると、一転して空気が変わる。
まるで、いい加減認めろと言われているかのように。
何も羽織らずに家を出た私は、思わず自分の腕を抱いた。


(諦めきれないんだ)


何度自分を納得させようとしても、結局逆戻りだ。
この夏の終わりを、ゴンと過ごした残暑が過ぎ去ってしまうのを許せないでいる。


「ねえ」


彼は現れてくれなかった。


「ゴン……」


ゴンと出逢った場所。
彼にとっては、ただ辛いだけの場所なのだろうか。
それなら、私はどこに行けばいいのだろう。


(まだ、いるよね……? )


ゴンの姿が見えなくなる度、そう問いかけては不安になる。


(それとも、彼女の近くに行ったのかな)


もしもそうなら、素直に喜ぶことはできないけれど――ゴンが消えてしまうよりは、ずっとずっといい。

でも、叶うなら――。
もう一度、ここで会いたかった。


『かなえちゃん』


普通なのに聞き慣れない呼ばれ方が、今こんなにも恋しい。だから、どうか――……。


「……風邪引くよ」


声がする前に、私は振り向いていた。


「……大澤先輩」


――靴音がしたからだ。