強く引かれたのでもないのに、いつの間にか先輩との隙間が狭まっていた。
至近距離で見上げてしまいそうになり、視線を逸らす。
「少しくらい、考えてくれないか。……俺のことも、選択肢にいれて」
(バレてるんだ)
自分自身は全く知らなかったのに、先輩は私に他に好きな人がいることに気づいていた。
「引き留めてごめん。できれば、送りたいけど」
「だ、大丈夫です!! 」
答えにから笑いをすると、やっとストラップから手を離してくれた。
先輩の指が、僅かに絡んだ髪を解く。
「今日はまっすぐなんだな。あれも、似合ってたけど」
「し、失礼します……! 」
これ以上ここにはいられないし、それ以外の言葉も見つからなかった。
今は返事も受け取ってもらえないし――このまま、先輩に口説かれるのも怖かったのだ。
明日、先輩はどんな顔をしているのだろう。
いつも通り、『いい先輩』でいてくれるだろうか、それとも――……。
(……逃げてちゃダメだ)
明日、どうあっても断らなくては。
先延ばしにしても、いいことなんかない。
ゴンのことも同じだ。



