夏空、蝶々結び。


「こんなところで、いきなり告白されても困るよな。正直、自分でも何でこんなに焦ってるのか分からない。……でも……」


指先が硬直し、入館カードが床に落ちた。
それほど動揺し――つまり、はっきりと聞き取れ、見えているのだ。

耳を疑う告白も、何かを急ぐような声も。
――逃すまいとするかのような、先輩の瞳も。


「今日このまま、佐々を帰しちゃいけない気がする。……当たり、じゃないか? 」


私の気持ちを見透かしたとしか思えない、その言葉も。


「そんなに驚くことかな」


苦笑して、落ちた入館証を拾ってくれる。


「みんな言ってたのに。俺たちのこと」

「そ、それは噂で……」


そう、ただの噂。
みんな、あることないこと好き勝手に――。


「知ってる。だから……否定しないでおいた」


あっさりと言われ、見つめ返され。
私は俯くしかできなかった。


(だって、知らない)


私の知る先輩は、真面目で少し堅くて、頼り甲斐のある少し厳しい……。


「……それ、いいな。ちょっと腹立つけど」


クスリと笑う先輩は、いつもよりもっと穏やかだ。なのに――……。


「“この人誰?”って顔。ムカつくけど……可愛い」


(……怖い、なんて)