「怖かったとかじゃなくて。前は仕事のことでイライラしてたでしょう? それは私じゃ助けてあげられなかったから。でも、今はどう見ても仕事の悩みじゃないですもん。それなら、私にもアドバイスできるかなって」
――ま、本当は少し怖かったですけどね。
「もちろん、誰にも言いませんから。お菓子でも食べながら、愚痴っちゃったらどうです? 」
ゴンのことをそのまま話すことはできないけれど、カナちゃんの申し出は嬉しかった。
会社で嫌なことがあった時、大澤先輩に褒めてもらえた時――喧嘩した時。
思えば、私はいつだってゴンに相談してきたのだ。
それが突然――そう、突然に彼がいなくなって、私は混乱していた。
ゴンが現れるまで、一体どうやって過ごしてきたのか分からなくなるほど。
「先輩。それってもう、はっきりしてるじゃないですか」
何が何だか理解できず、何故か年下の男の子と同居するはめになったこと。
失礼で横柄で、最初は苦手だったこと。
一緒に過ごすうちに、たくさん優しさも感じられて戸惑ったこと。
――もうすぐ、出ていってしまうこと。
幽霊であることは伏せていても、驚かせてしまったけれど。
彼女は口を挟むことなく聞いてくれ、最後にこう言ったのだ。
「年下とか、いずれ離れなくちゃいけないとか……先輩がブレーキかけてるだけ」
ゴンが年下に見えるから。
可愛い恋人がいたから。
ゴンが幽霊で、いつか……ううん、今日か明日かもしれない、差し迫った未来にいなくなってしまうから――……。
「先輩は恋をしています。……誰に、でしょうね」
――好きになんか、ならない。



