夏空、蝶々結び。



「かなえちゃんと……歩いてて思ったんだけどさ。帰りが遅くなると、会社から大通りにでるまで結構暗いよな」


もう慣れてしまったけれど、あの通りはオフィスビルばかり。
ひとつ、またひとつとビルが消灯する時間になると、お店が並ぶ通りに出るまで薄暗い。


「あいつ、最近やたら“物騒だから”って言うし。毎晩のように遅くに帰らせるの、心配だからだったりするのかも」


このところ、ずっと具合も良くなかった。
無理するなと言われても、毎度有休を充てることも難しく……ぼんやり歩いていたこともあった。


「本気でうざかっただけかもだけど? ……いいんじゃない、そう思っとけば」


最早癖なのだろうか。
要らない一言は相変わらずだけれど、私は既に変わってしまった。


「……なにニヤニヤしてんだよ。ついに壊れた? 」


笑いが込み上げるまでに。


(今でもムカつくことはあるけど)


そんなに照れ屋なんだろうか。
そう思えるくらいには、私のゴンの印象は変化していた。


「……やることないなら寝れば。まったく、毎日毎日、会社と家の往復だけなんて。たまには遊ぶなり、習い事するなり、ちっとは女磨く素振りでもしたらいのに。んな、こっ恥ずかしいゲーム代でお釣りがくるんじゃねーの」


趣味にケチをつけられる謂れはないが、仰る通りでもある。