・・・
喧嘩自体久しぶりなのだから、当然誰かとの仲直りだって久々だ。
そもそも私は喧嘩を回避する術を知らずのうちに身につけていて、ゴンの言うように余程親しい人じゃないと大喧嘩なんてしない。
『あ、難しいかも』
と感じれば、そっと離れるのが常だった。
「あれ、早いね」
優しく起こしてもらうまでもなく、今朝は早起きだ。
今までどこで何をしていていたのか、幽霊には必要もないだろうに、ゴンは普通にドアを開けて寝室に入ってきた。
「うん。……他に誰もいないうちに」
先輩と話したかった。
先輩がなぜ、あれほど声を荒らげたのかは……正直今も分からない。
それでも怒られた理由は理解しているし、執務室であれはあり得ない。
何にせよ、反省と謝罪が必要なのは当たり前だ。
「それがいいだろうね。ま、頑張って」
いつも通りの調子に緊張が緩む。
さして興味がないと声で示しておきながら、
「かなえちゃん」
支度を進める私を止める。
「どうかした? 」
返事をしても、特に何を言うでもなく。
不思議に思って尋ねると、ようやく彼は口を開いた。
「いや………おはよ」
じっと見た後、一瞬だけ目を逸らし、再びこちらを見つめる。
多分――誤魔化したのだ。
目が止まり、今日はまっすぐの私の髪が視界に入っていたのを。
「……おはよ」
気がつかなかったのを装う為、挨拶に集中した。
『おはよう』
『おやすみ』
そのどちらも、何度も繰り返したはずなのに。
(いつも、どんな気持ちで……)
それを受け取り、彼もくれたりするのだろうか。
ゴンは眠らない。
二つとも彼は必要としておらず。
もしかしたら、嫌な思いをさせているのかもしれないのに。
だとしても、私は言わずにはいられなかった。
ゴンは確かに、ここに存在していると。
「行こっか」
そんなことを考えていたら、ぼうっとしては急い朝食を掻き込むの繰り返しだった。
ぐずぐずしていたら、早起きの意味がない。
支度を済ませると玄関に降り立ち、ドアを開けたままゴンを待つ。
靴を履くこともなければ、初めてここに来た時のようにすり抜けられる。
それでも彼は少しだけ目を丸めただけで、お行儀よく私の後に続いてくれた。
ただの男の子だ。
最初から、今もずっと。



