夏空、蝶々結び。



「……よし! 」


こうしていても仕方ない。
窓を開けると、今日もまだ夏空。
ひんやりすることも多いけれど、まだまだ暑さはくすぶっている。
この先、少なくともしばらくは残る痛みのように。


「ありがと」


お守りを胸に呟く。
効かなかったんじゃなく、ゴンが言った通りどこかで誰かと繋がっているのだ。
ただ、赤い結び目が今は遠くにあって、なかなか見つけられないだけ。

それはまだ、ゴンじゃないかもしれない。
大澤先輩でもないのかもしれない。

今のところ、まだ――赤い糸は誰かとの間で、緩くたわんでいるのだろう。


(でも、大丈夫。今はまだ悲しくても……)


たとえ上手くいかなくても、何度だって結び直してしまえばいい。
そしていつか、きっと――ぎゅっと結ばれることができますように。


『笑っててよ、かなえちゃん』


だから、今は――……。


「……うん」


今はまだ、その日の為に――そっと蝶々結びだ。




【夏空、蝶々結び・おわり】