夏空、蝶々結び。


今は、まだ。


「……いえ」


申し訳なさが伝わったのか、笑って頭を撫でてくれた。
子供の頭を撫でるような、手の動き。
それほど甘さや色っぽさが含まれていなかったのは、先輩が意図してくれたのだろう。


「ありがとうございます」


いつか、恋人らしく変わっていくのか――まだ、分からないけれど。


「じゃあ、俺は先に出るけど……遅刻するなよ。言いたくないけど、この上、立場上だけでもお前を叱るとか、申し訳なさすぎる」


先輩が申し訳なく思うことは、何もないのだが。


「……しませんよ」


だからそう答えたのに、注意しておきながらなぜかムッとして、仕返しとばかりに先輩が振り向く。


「……ゆっくりしておいで、とか言えたらいいのにな」


まるで当てつけのように言われ、頬が熱くなる。
それを見て、ようやく先輩がちゃんと笑って――ドアを閉めた。