夏空、蝶々結び。


「あの大澤が仕事中にコンビニで酒買って、会社で酔うとか。あんまり可哀想だったから、缶は処分してやった。……らしくないよな。それだけ、あんたのこと……」


自分で教えたくせに、すぐにムッとして、


「……ま、この場で俺が言い訳してやる必要ねぇけど」


そんなこと言うから。
やっと、クスッと笑えるようになった。


「ね、かなえちゃん」


ほっとしたように、また私を呼んで。


「最後に、もう一回。……せっかくだからさ」


唇が重なる。

つと、止める間もなく頬を流れたのは。
ぽつりと、鎖骨へと落ちて言ったのは。

どちらのものか分からないまま、弾けていく。
先程とは異なり、それはどこまでもプラトニックで――淡く淡く、けれども確実に、私の胸を痛めつけていた。


「ゴン……? 」


眉を寄せ、こめかみを押さえているのが心配で覗きこんだ。


「ん……そろそろ、大澤が起きそう、かな。……時間切れ」


いつから我慢していたのだろう。
謝る私に、笑って首を振った。


「大丈夫。……けど、もう……」


――……もう……。


「今、出て行かないと、俺本当に地縛霊だもんな。今度はここ……あんたのところに」


私の心臓へとふっと伸びてきたのは、紛れもなくゴンの指だ。

とうとう、きてしまったんだ。
ゴンと別れる――見送る日が。