夏空、蝶々結び。




「……何、言ってんの……」


見下ろしてくる瞳が、大きく見開かれる。
それは先輩のものだけれど、今私を実際に見ているのはゴンだった。


「口調、戻ってるよ。わりと最初から」


彼の腕が緩む。
どうしようか迷い、名残惜しさも感じながら身を起こした。


「できない、よね。でも、あんたの言うことも当たってる。……ゴンならいいかとも思ったから」


もちろん、なかなか信じられることではない。
それでも口調の違いや、ふとした表情、私を見る視線の移ろい方。
それらを違和感というには、あまりにも心地よかったのだ。


「びっくりしたし、あり得ないとも思ったけど……もう時間がないから、賭けてみた」


――ゴンが、あの場所に来ることに。


「ぷっ……」


先輩の姿をしたゴンは、かなりの間きょとんとし――やがて、盛大に笑いだした。


「さすが、妄想激しいね」


――かなえちゃん。



(何よ……)


「最初から、そう呼んでよ……! 何で……」


大澤先輩の身体を借りたりしたの。


「馬鹿じゃねぇの」


起き上がり、力の抜けた体をトンと押された。


「何でって……あんたを襲う以外に、何かあるわけ? 」