ふふっと笑っていると、棒高跳びの計測に動きがあった。
さっきのグループは全員終わったようで、最後まで残っていたのであろう数人が去っていき、新しい選手がやってくる。
その中に、李世先輩の姿があった。
陸上部らしい、ノースリーブに半ズボンという格好だ。
スラリとした手足が存分にさらされていて、じっと見つめるのをなんだかためらってしまう。
「ところで、陽茉はどうしてここにいるんだ?」
「ちょっと、応援に来てほしいって頼まれたの」
「へえ、どの選手?」
「えっと……高跳びのところにいる、赤いユニフォームを着た、背の高い人」
「えっ、あれって、2年の菊里先輩?」
「そうだよ。和くん、知ってるの?」
「知ってるもなにも、陸上部の間じゃけっこう有名な人だよ。去年、かなりの好成績出してるから」
「そうなんだ……」
私、先輩が陸部だってことも知らなかったし、陸上の世界で有名だってことも、知らなかった。
先輩は私のこと、たくさん知ってくれているのに……。
