ん?今、誰かに呼ばれたような。
キョロキョロと見回すと、再び声が響く。
「やっぱり陽茉だ!おーい、こっちこっち!」
ひらひらと動く大きな手が、私の視線に入る。
声は、スタンドで立ち見をしている列の先頭から飛んできていた。
「か、和くん⁉」
「よう!」
私を呼んでいたのは、幼稚園の頃からの幼なじみ、橘和人くんだった。
和くんはニカッと笑うと、私を手招きする。
よく見ると、和くんの隣に、微妙に一人くらい入れるようなすき間がある。
私は頭を下げながらゆっくりと進んで、和くんの隣にたどりついた。
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