「えっと、短距離走とかハードル走に出るんですね?」
あんなに足が速いんだしね。
「いいや?俺、専門は棒高跳び」
「え?」
棒高跳びって、棒を軸にして、数メートルもあるハードルを飛び越えるやつ?
え、ええーーー⁉
……と、こんな感じのいきさつで、私は競技場にいるのです。
ホント、競技名を聞いておいてよかった。
いくつかの競技を並行して行っているから、見つけられないまま先輩の出番が終わっていたかもしれない。
今、フィールドの奥の方で棒高跳びの計測自体は始まっているんだけど、先輩の出番はまだみたいだ。
でも、始まったとしても、ここからじゃあんまり見えないなあ。
もっと前に出たいけど、観客がけっこう多くて、良い場所はもうとられてしまっている。
運よく、空くのを待つしかないかな……。
「……陽茉?」
