「なーるほど。だから陽茉ったら、高校生活初日から、制服も体もくたくたになってたのね」

「うん……」




改めて振り返ってみると、相当恥ずかしい出来事だったなあ……。



「それ以来、なにかと李世先輩に話しかけられるようになって……思いっきり転んだとこ、見られちゃったし……か、からかわれてるのかな?」

「うーん、さっきのやり取りも踏まえると、からかったりバカにしてるっていうよりは、むしろ……」


「むしろ?」




梓ちゃんは少し考えこんだ後、なぜかブンブンと首を横に振った。



「やっぱ言わない‼あの人に陽茉をとられるって思うと、なんか無性にムカつくし!」

「え、ええ⁉」





普通に聞きたかったのに!




「続き、気になるよ」

「陽茉は当分、あたしと一緒にいればいいの!」

「そ、そうなんだ?」




なんだかよくわからないけど、梓ちゃんと一緒にいられるなら、うれしいな。





「それより、陽茉ってそんなに食べることが好きだったんだね。なんとなくは気づいてたけど」

「ま、まあね。梓ちゃん、知ってたの?」

「だって、毎日あんなに幸せそうに弁当を食べる子、初めて見たもん」





真顔で答える梓ちゃん。


わ、私ったら、一体どんな顔して食べてるの⁉




「あたしはともかく、菊里先輩はどうして分かったんだろうね?」

「そ、そこなの!入学式の日の時点で、私のこと、知ってるはずがないし」



「「うーーーん……」」




声を合わせて、うなる私たち。





「陽茉、お腹でも鳴らしたんじゃない?」

「そ、そうなのかなあ……」




たしかに、先輩が急に笑い出した理由としては納得できるけど。



転んでおいて、お腹まで鳴らすなんて、恥ずかしすぎるよ……。