俺ががしがし頭をかいていると、姉が蔑むような声で言う。
「李世、あんたいつの間に彼女いたの?あと、二股かけてたの?」
「そんなワケないだろ!俺だって、なんのことかサッパリだよ」
もちろん、俺は慌てて否定する。
でも、ふと聞こえてしまった陽茉ちゃんの心の声は、本当に動揺しているようだった。
ひょっとすると、根も葉もない俺のウワサを聞いて、真に受けてしまったのかもしれない。
……ひとまず冷静に、状況把握に努めよう。
下手にあの男と陽茉ちゃんの間に割って入って、ヒール役に仕立て上げられてしまっては、たまったものじゃない。
俺はあの男に対する怒りを、無理やり飲みこんだ。
