悲鳴の後に、ザザザッと、何かが木の葉と一緒に転がり落ちる音がする。
明らかに、この道の先から聞こえた。
私は自分が転げ落ちたみたいに真っ青になりながら、必死に手足を動かす。
やがて、ぼう然と固まっているさっきのグループの人たちの姿があった。
誰も何も発せず、ただただ崖の方を見つめている。
……つぼみちゃんの姿は、ない。
「あ、あの、悲鳴が聞こえたんですけど」
私が声をかけると、せきを切ったように口々に話し始める。
「は、班の子が一人、ここから落ちちゃって……」
「マジで、押したりとかはしてないから!」
「おい、誰か早く先生呼べよ」
「でも、この道通ってたことバレたら、ヤバくね?」
「景品ももらえないだろ?」
つぼみちゃんのことより、自分の身や景品のことしか考えていない先輩たち。
私は怒りで全身が熱くなっていくのが分かった。
いつもだったら初対面の先輩なんて、声をかけるので精一杯なのに、口が大きく強く動く。
「早く先生を呼んでください!つぼみちゃんのことは、私が見てますからっ」
「おっ、おい!」
私はロープをまたぐと、木の根っこをつかみながら、ほぼ垂直に降り立つ側面を、慎重に慎重に下っていく。
こういうのを、火事場の馬鹿力っていうんだろうか。
運動神経なんて全然ないのに、ボルダリングみたいにうまいこと足場や持ち手を作りながら私は進む。
