春らしい朗らかな天気で、日差しも暖かい。


校門を抜けるとふいに風が吹いて、桜の雨が降り注ぐ。


右手で宙をつかむと、薄桃色の花びらが、一枚だけ手のひらに収まった。


なんだかうれしくて、私は制服のポケットの中にしまう。


ああ、でも、花びらが舞うってことは……。


顔を上げると、入学式には満開だった桜の木々が、ずいぶん寂しい姿になっていた。


校庭の隅にある大きいやつは、特にお気に入りだったのに……。




「おはよう、陽茉っ!」