結局、米俵のように担がれた私が着いたのは、学校の屋上だった。

ポイ、と地面に投げられた私の口からは「ぐえっ」と、情けない声が出た。

「……で、先輩が求めてるのは何ですか。私が学校辞めることですか?」

「……はぁ!?」

意味が分からない、とでも言いたそうな先輩の表情にこっちのほうが意味が分からなすぎて、目を見開いて「はぁ!?」と、声が出てしまった。

「そもそも俺は……」

先輩が何かを言いかけた時、黒い物体が扉から飛び出してきたかと思えば、それは先輩に飛びかかり、地面に押し倒した。

フーッ、フーッと息巻くそれはよく見ると、うちの高校の学ランで、その生徒は金髪だった。

「テメェ……! 茜姉に、何してやがるんだ!? あぁ!?!? 上級生だからって、やっていい事と悪いことぐれえ、あるんだろうが!!! あぁ!?!?」

「って、セラちゃん!?!?」

あろうことか、その生徒は義弟であるセラちゃんだった。

「茜姉、こいつに何された……? 返答によっては、ぶん殴る」

あ、これ正直に言ったら半殺しにするやつだ、と判断した私は嘘をつくことにした。

「いや、昨日私が失礼なことをしてしまったから、謝ろうと思って、ね! 先輩!」

話を合わせろ! と、セラちゃんの下に組み敷かれている先輩を睨む。

「あ、ああ。そうなんだ、彼女が謝らせてくれ! と、強請るものだからな……」

「……チッ。今は茜姉に免じて、そういうことにしておいてやる」

先輩から身体を離したセラちゃんは、今度は私の目の前に立った。

セラちゃんが不良になってからと言うものの、たまにこういうことがある。

私に害を成す可能性が少しでもある人が現れると、たまにこうやって守ってくれようとしてくれるが、毎度毎度やり過ぎなのだ。

ただでさえ空手の段持ちだから、立場が危ういと言うのに。