それから言葉数も少なくなり、いつも通りに学校へ行った。

やってしまった、と言う気持ちが大きくてどうしても喋ることが出来なかった。

「……ゲ、これセラちゃんのお弁当箱じゃん……」

面倒臭い授業の後の憩いの時間であるお昼ご飯の時間、嫌なことに自分のお弁当箱とセラちゃんのそれを取り違えていることに気づいてしまった。

食べ盛りの彼の食べる量は凄まじく、どちらかと言うと少食な私のお弁当だけでは到底足りないだろう。

ため息をつき重い足取りで、一年生の校舎へ向かう。

「オイ」

道中、それはまあお顔が整った黒髪のイケメンさんに声をかけられる。

「……何でしょうか、急いでいるんですが」

「いや。何か悩んでいるようだったから、声をかけただけだ」

いい人だなぁ、なんて思ったけど結局は家族のいざこざだし、迷惑をかける訳にもいかない。

「いや、ただの身内のいざこざなので必要ないです」

「いや、眉間に皺が寄っているぞ。そんなに悩んでいるのなら、聞いてやる」

「いや、だから必要ないって……」

「いや」

「いや……」

堂々巡りになりそうな時、私の中の何かが音を立てて切れた。

「ーーーっ! だから、身内のいざこざだからって、言ってるんでしょうが!! 何!? 耳栓でもしてるんですか!? 日本語分かります!? 悩み!? 必要ないって言ってるのに、突っかかってくるアンタが今の一番の悩み!! 分かる!?」

気が付いたら、一息で捲し立てていた。

あ、やってしまった。