「おい、茜姉(あかねえ)。起きろ、遅刻すんぞ」

夢の中で可愛い頃の幼なじみと遊んでいると、頭の方からドスが効いた低い声が聞こえてくる。

嫌々ながらに目を開けると、そこには金色の短髪に細眉、極めつけは目つきの悪い不良が居た。

夏目 星羅(セラ)

そう。彼こそが、「あかねちゃんは、ぼくがまもる!」と言っていた、あの病弱の可愛い幼なじみだ。

身体を強くするために、と空手を始めてからと言うものの、気が付いたら「強拳(ごうけん)のセラ」という異名を持つ不良になっていた。

まぁ、今は母子家庭だった彼の母であるユミさんと養子縁組をしているから関係性は義理の兄弟だけど。

「やだ。あと五分」

「それ、もう五回は言ってるからな?」

「やだぁ、まだ眠い……」

「今日の朝飯さ……」

「お味噌汁の具は?」

「……茄子」

「起きる! おはよう!」

現金なヤツだなぁ、とセラちゃんは困ったように笑う。

「だって、お義母さんの茄子のお味噌汁美味しいんだもん!」

私を見つめるその笑顔は、昔と変わらない。

「うん、おはよ」

変わらない、何もかも。