「あ、あの!」 思わずわたしの前を通り過ぎようとしていたサラリーマンに声をかけてしまった。 「はい?」 「あれ、あれみてください」 けやきの木を指さす。 「けやきの木がどうかしました?それよりすいません妻が家で待っておりますので」 口調は丁寧だったけど、まるで変なやつに声をかけられたと思ったかのようにスタスタと足早に去っていく。 でもそんなこといまはどうだってよかった。