数十秒後、「もしもし?」と眠そうなあいつの声がした。俺は「遅い!!こっちは大変なことになってるんだぞ!!」と怒鳴り、若菜が逃げたことを話す。すると、あいつはのん気にあくびをした。

「おい!人の話を聞いてるのか!?」

苛立ち、声が大きくなってしまう。あいつは俺の怒鳴り声に動じることはなく、「そんなカリカリすんなよ」とマイペースに言った。

「お前の大事なお姫様なら俺がちゃんと捕まえたよ。お前の家の近所を彷徨いていたから、その時に捕まえた。俺が警察だって知って安心したのか気を失って、今も目は覚めてない。まあ、朝になったら起きると思うけどな」

「そうか……。ありがとう」

ちゃんと罠にかかってくれているみたいでホッとする。怒りが吹き飛び、心に余裕ができた。でも、これだけは伝えておかないといけない。

「お前、若菜に手を出すなよ。手を出したらどうなるかわかってるよな?」

低い声で言うと、「警察官に対して脅迫かよ」とケラケラと笑う声が聞こえてくる。