鏡の中の自分をジッと見ていると、嬉しそうな圭さんと目が合った。後ろを振り返れば顎を持ち上げられ、優しく口付けられる。

「んっ……フウッ……」

「んっ……んんっ……」

何度も優しくキスをされて、やっと唇が離れた。すると今度は抱き締められる。

「近々、やっと仕事が休みになったんだ。若菜が前に見たいって言っていた映画を借りてきて二人で見よう。あと、二人でスイーツを作るのも楽しそうだな。色々レシピ本買ってみたんだよ!」

幸せそうに笑い、圭さんは言う。でも圭さんが望む休日はもうやって来ない。だって私は逃げるから。

「そうだね。久しぶりに二人でゆっくり過ごせるね」

口ではそう言って笑いながら、心の中で「ごめんなさい」と呟く。私を監禁して自由を奪ったのは圭さんで悪いのは全部彼なんだけど、何故か「ごめんなさい」という言葉だけが真っ先に頭に浮かんだ。

圭さんはとても優しくしてくれて、暴力を振るったり、無理やり私が嫌がることをしたりはしなかった。でも、私は圭さんを好きにはなれなかった。だからかもしれない。