次の事件だ、と楽しそうに若菜はテレビを見つめる。俺も若菜の手を握り、テレビを一緒に見ることにした。

「今から十年前、凶悪犯から一人の少女が逃げ出したことに全米が驚愕した」

ナレーションが始まり、実際に事件が起きた現場などが映されていく。紹介されるのは誘拐・監禁事件のようだ。

チラリと横を見ると、若菜は真剣な顔でテレビ画面を見つめている。俺から逃げる時の参考にするつもりなんだろう。

誘拐された少女は、犯人がいない隙を見て頭につけていたヘアピンで足枷の鍵穴をいじって脱出に成功していた。隣で若菜が「ヘアピン……」と呟く。

今度、ヘアピンを買ってきてあげよう。若菜に希望を与えるためにね。その希望は簡単に壊れちゃうと思うけど。

そんなことを心の中で呟き、若菜に悟られないように黒い笑みを浮かべる。若菜が壊れて俺に縋ってくる姿を想像すると楽しみで仕方ない。

「若菜、若菜は俺の大切な恋人だからね。ずっと愛してるよ」