「君をずっと愛してる。何があっても、ずっと……」

決められた台詞を口にし、目の前にいる女優の手を取って口付ける。刹那、周りの空気が変わっていくのがわかった。俺の演技に多くの人が魅了されているんだ。目の前のこの女優も……。

「カット!とてもよかったよ!」

監督がそう言うと、「ありがとうございます」と言いながらすぐに女優から手を離す。相手はどこか残念そうにしていたけど、俺が手をつなぎたい人はこの世でたった一人しかいない。

俺は今、最近人気急上昇中の女優が主演を務める恋愛ドラマに出演している。女優の恋人という設定だ。

「若菜、今は何をしてるのかな……」

イチャつくシーンの撮影の時、頭にあるのは目の前にいる女優のことじゃなくて家で待ってくれている若菜のこと。ほんの少し離れただけで気になってしまって、何度キスをしてもすぐに求めてしまう俺にとって特別な女性だ。

「次はこのシーンを撮るって言ってたな……」