スマホは諦めることができても、マンションの部屋を勝手に解約されて居場所がない私にとって財布がないのは困るどころの話じゃない。財布の中に銀行のカードとか大事なものが全部入ってる。財布だけでも取り返さないと……。

「でも、もしすでに処分されていたら……」

カードも全部捨てられていたら、脱出しようにもできない。そう考えると焦ったけど圭さんの性格を考えてそれはないとすぐに思い直した。

圭さんは絶対に私を逃そうとはしない。だから今でもこうして拘束している。個人情報が入った財布を捨てたら怪しまれるということくらい想像して家のどこかに隠してあるに違いない。

隠すとしたらどこ?地下室はまずない。そうなるとリビング?

「若菜、ちょっとマネージャーに電話をかけてくるから待ってて」

「わかった」

圭さんが今日は仕事が休み。私は地下室からリビングに連れてきてもらっている。足には相変わらず枷があるけど……。