「ほら早く。飛行機の時間に遅れちゃう」

本当はまだまだ余裕があるけど、わざと急かしてみる。すると若菜は、顔を真っ赤にしながらも覚悟を決めたようだ。俺がキスをしないと出て行かないと思ってくれたみたい。

「目、閉じて?」

どこか震えた可愛らしい声で言われ、俺は目を閉じる。でも実際は少し目を開けて若菜の様子を見ているんだけどね。

若菜は恥ずかしそうにしながら俺の頬を優しく包む。そして、隣にいる七海に「すみません。後ろを向いていてください」とお願いした。七海が「かしこまりました」と後ろを向いたのを見届けた後、若菜はゆっくりと俺に顔を近づける。そして互いの唇が軽く触れた。

「んっ、ごちそうさま」

唇が離れた後、まだ恥ずかしそうにしている若菜の頭にキスを落とし、俺は家を出る。本当に可愛い。あの可愛らしい表情を忘れることはないだろう。

若菜のキスのおかげで、仕事が頑張れそうだ。