牧さんはシャツの袖をめくり、拳を作って言う。刹那、グシャッと潰れる音がリビングに響いた。

牧さんは私の目の前で、硬い皮に覆われたメロンを一瞬にして拳で破壊してしまった。こんなこと、普通の人にできるはずがない……。

「七海は格闘技の経験者で、全国大会で何度も優勝経験があるほどの実力者なんだ」

ニコニコしながら圭さんが言い、私の頬に飛んでしまったメロンの汁を手で拭う。そしてペロリと妖艶な仕草で舐めた。私は恐怖を必死に誤魔化し、「強いんですね。すごいです」と何とか言葉を口にする。脱出できるかも、という甘い期待は消えてしまった。

「私は紫水様の味方です。紫水様が幸せになっていただくためならば、どのようなこともご協力します。あなたを決して逃しませんので」

鋭い目で見られ、私は「はい……」と消えてしまいそうな小さな声で言い、俯いた。犯罪に巻き込まれている私を脱出させてくれないなんて、運命って残酷すぎる。