誘拐されてから三ヶ月が経った頃、私は未だに脱出できずにいた。脱出しなきゃと思ってはいるんだけど、相変わらず拘束はされたままだし、いい計画も浮かばない。

「どうしたらいいかな……」

地下室で一人考えていると、圭さんが入ってくる。私は慌てて笑顔を見せた。

「若菜、実は会わせたい人がいるんだ。ちょっと来てくれる?」

圭さんはそう言い、私の首輪と足枷を外す。そしてリビングに連れて行かれると、椅子にショートカットの女性が腰掛けていた。シンプルなデザインのシャツに黒いスキニーパンツを履いて、仕事がテキパキできそうな雰囲気の女性だった。

「圭くん、この人は誰なの?」

少し慣れてきたタメ口で訊くと、圭さんに椅子に座らされる。そして女性を紹介された。

「彼女は牧七海(まきななみ)。俺と同い年で、この家の家事手伝いを前にしてくれていたんだ」

圭さんがそう紹介すると、牧さんはペコリと頭を下げる。誘拐されてから初めて圭さん以外の人と会ったけど、牧さんは通報してくれないのかな?今も私の手には手錠がつけられているんだけど、牧さんは驚く様子も見せない。